研究

Artificial World Implementation Laboratory (AWIL)Artificial World Implementation Laboratory (AWIL)2022/10/6 16:582025/5/4 17:11

Motion-Less VR(モーションレスVR)


リアルの身体を動かさず、バーチャル身体を自由に操作できるVRシステムの実現を目指しています。
 現行のVRシステムでは、モーションキャプチャを用いてリアル身体の運動そのものをバーチャル身体の動きとする方式が採用されています。しかしこの場合、移動可能なバーチャル空間の範囲がリアル空間の広さに依存することになり、またバーチャル身体で表現可能な動きはリアル身体で実行可能なものに限定されてしまいます。そこで、リアル身体の運動を抑制した状態において、運動の意図のみを正確に取得し、さらに運動している感覚を可能な限り与えることによって、リアル身体の運動を伴わないバーチャルリアリティ(Motion-Less VR)の実現を目指しています。

運動感覚の提示


Motion-Less VR では、身体を動かさなくても「動いている」と感じられる体性感覚が没入感の鍵になります。当研究室は、その強さと持続性を高め、関節可動域のほぼ全体にわたって自然な運動錯覚が得られるよう、効果向上に取り組んでいます。最終的には、視覚に頼らず全身の動作をリアルに実感できる環境を目指します。

運動意図の取得


バーチャル身体を実身体と同じ感覚で操作するには、ユーザが「動こう」と思った瞬間の意図を確実につかみ、即座に反映することが不可欠です。当研究室では、その精度と操作感をさらに高め、滑らかで違和感のない操作体験を実現することを目標に研究を進めています。

VR酔いの評価・抑制


視覚・前庭・体性感覚の組み合わせが従来のVRとは異なるMotion-Less VRでは、どの程度VR酔いが生じるのか現時点では明確になっていません。当研究室では、まず主観評価により酔いの発生頻度と強度を定量化し、その結果を踏まえて映像の表示方法や外部刺激の提示条件を最適化することで酔いの抑制を図っています。最終的には、長時間でも快適に利用できる環境の実現を目指します。

プロテウス効果に関する研究


バーチャル環境では、アバターの外見や周囲の景観が利用者の行動や心理に影響を及ぼすとされています。当研究室は、この「プロテウス効果」に着目し、多様なアバターと環境条件を組み合わせた実験を通じて、行動変容の傾向と要因を解析しています。得られた知見をもとに、教育やリハビリテーションなどで活用できるアバター・環境デザインの指針確立を目指しています。

過去の研究


電気味覚


電気的な作用により人工的な味覚知覚・飲食体験を創出する研究です。
 味覚は未解明な部分が多い感覚器です。近年では、電気を用いて味覚を提示する・変化させるといった研究が盛んに行われています。電気により人工的に味覚知覚・飲食体験を作り出し、自由に制御することができれば、日常生活におけるQOL(Quality of Life)の向上や、人工世界における現実感の向上に繋がります。そこで、電気刺激により塩味を増強させる研究や、炭酸飲料の炭酸感を増幅させる研究に取り組んでいます。
 

身体図式


身体の認識をバーチャル環境のアバターに適合させる研究です。
 通常、リアルの身体は特に意識せずに自由に動かすことができていますが、バーチャルな身体を操作する場合には、その形状が自身と異なることによって、操作性が低下してしまうといった問題が起こり得ます。そこで、この問題の根本的な原因が「身体図式」と呼ばれる身体形状を記憶している脳内モデルの乖離にあると考え、その学習メカニズムに基づき、通常の身体に最適化されている身体図式をバーチャル身体の形状に適合させる手法を提案し、有効性の検証を進めています。本手法の確立により、遠隔コミュニケーションや遠隔ロボットの没入操作による医療・災害支援など、バーチャルリアリティを使ったシステム・サービスの高度化が期待されます。

© 2023 日本工業大学 先進工学部 ロボティクス学科 人工世界実装研究室